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京友禅デザイン画「草稿」× 芸術家/ 肉体彫刻家 「和久井 拓」氏による新しいアートの形

Art | 2022.03.21

Text by Hinata official

  • Interview
  • KYO"NEXT"YUZEN

京友禅の伝統資産をデジタルデータ化することで、現代のアーティストとのコラボを可能に。

HINATAでは京都「株式会社関谷染色」とともに、京友禅の芸術性を世界に発信するプロジェクトを立ち上げ、失われていく美の伝統資産をNFT化する取り組みを行っております。

京友禅の伝統資産をNFTでデジタル資産へ転換。日本の様式美を描いた草稿が、未来のアートを生み出す源泉となる。

NFT化することで唯一無二のデジタルデータの所有者になっていただき、更にNFTを手に入れた方にはそのデジタルデータ自体も使ってもらい、新たなアートを生み出す仕掛けです。

「和久井 拓」氏による美の伝統資産の捉え方

HINATA:和久井さんと言えば、肉体彫刻家として書籍を出版なさっておりボディーメイクのイメージが強い方も多いのではないでしょうか。しかし、ご実家は代々陶芸一家。ご親族にも伝統工芸作家さんがいらっしゃったりと、幼少期より伝統的な芸術に触れながら成長なさってきたと伺っています。現在は、会社経営を行う傍ら、ファッションデザイン、キャラクターデザイン、更には日本食文化栄養協会などを立ち上げたりと、ビジネスマン、アーティストとしてマルチに活動されています。

今回、京友禅のデザイン画である「草稿」は自由に2次創作OKという許可をいただいています。そのため、友禅のイメージを理解しつつ、新たな風を吹き込んでくださる方はどなたかといろいろ熟考しました。単にイラストやファッションなど今までの枠に収めていく感じではNFTのアーティストコラボレーションとして面白味にかけてしまうため、他分野を跨いでマルチに活動をなさっている和久井さんにご相談させていただきました。

我々、HINATA内部でも過去の作品から和久井さんは非常に表現の幅、発想の幅が広いクリエイターだと評判になっているのですが、今回、この京友禅とのコラボレーション企画について、どのようなコンセプトで向き合われたのでしょうか?

和久井氏:はい、今回の経緯、拝見した「草稿」などから、どのようにアプローチしていくべきか私も少々悩みました。

京友禅の老舗、関谷染色さんがご提供くださっている「草稿」は100年以上前のものもあり、柄を使用した着物が現存するかどうかは不明。既に失われた可能性も高いとお聞きしました。もはや、二度とその美しい姿を見ることが叶わないかもしれない…そのような稀少な伝統美を、私は現代の価値観や技術を使ってどのような表現に落とし込むべきかー。いろいろと考えました。

そして、今回、私の頭の中に浮かんだテーマ[コンセプト]が “懐古愉歴(かいこゆれき)” です。

今回のデザインの元となった京友禅「草稿」

HINATA:懐古愉歴、初めて聞く言葉です。どういった意味でしょうか?

和久井氏:私が新しく造った言葉で、謂わゆる造語というやつです笑 様々な業界で言えることですが、伝統的で歴史のあるものを現代で売っていくために常に新しいものを取り入れ、新しくあろうとする力学が働きます。ファッションなどはその最たる例かなと。それ自体は大切な視点であり、素晴らしい姿勢であると思うのですが、一方で歴史あるものの愉しみかたは決して新しくある事だけではないというのが私の考えです。

皆さんが単に金ピカの新しいものが大好きなだけならば、わざわざ歴史ある寺社仏閣を訪れたりしませんよね。我々人間は、新しいものにだけでなく、経年変化する事で得られる雄大さや美しさを感じる美的視点を備えています。

それを短い言葉で表すならば「懐古愉歴」。

”古きを懐かしみ、歴史を愉しむ”事を意味しています。

ドライフラワーを美しく感じたり、誰も使わなくった廃墟に美しさを感じるなど、古くなる事で我々のイマジネーションを強く刺激してくれるものってあるじゃないですか。古くなってより味わい深くなるものは確かに存在すると思うんです。

HINATA:なるほど、新しい言葉だったのですね!確かに歴史あるものとのコラボなどはいかに現代ぽさを取り入れるかに焦点を置いた作品が多いように思います。ある意味、常に新しくあろうとする着物業界へのアンチテーゼということでしょうか?

和久井氏:はい、まさに。時代を経ることの積み重ねを積極的に作品に反映させ、作り手もそれを手に入れた方もお互いに古き良きを愉しめたらと思いました。日本の自社仏閣も伝来当時は色鮮やかなものだったが、風化に耐え、褪色していったものが日本の風土に根付き、独特の簡素さや侘び寂び文化となりました。

友禅斎が住んでいたという知恩院の門前。かつての知恩院も今より色鮮やかな時代があったはずですが、今は補修されつつ風化に耐えながら歴史を刻んだ色褪せた佇まいが却って風格となって参拝者をゆったりと包み込んでいるのだと思います。

和久井氏が手掛けた京友禅「草稿」を元にしたアート

HINATA:言われてみると、今の歴史ある神社仏閣も最初は全然雰囲気が違って、時間の積み重ねで今の風格があるわけですね。

和久井氏:京友禅も、もはや色彩を失っていたとしても、その柄や構図だけで十分に京友禅であると認識できるほどの歴史と人々へのインプットを重ねてきているもの。本作品は色鮮やかさで人々を魅了した伝統工芸としての京友禅を自社仏閣同様、風化、褪色など敢えてエイジング処理を施す事で、京友禅の歩んできた歴史を懐かしみながら能動的に愉しむ事を目的として制作してみました。

NFTという新しい技術を使うことで生まれる新しいアート

今回和久井氏にチャレンジして頂いた形はまさに新しいアートの生まれ方だと考えています。

京友禅の「草稿」をNFTとして所持することは、長きに渡り受け継がれた伝統美の、今までの歴史とは違う、デジタルという新たなる系譜の継承者となること。その宣言であるとも考えられます。

その権利を手に入れた人が自由な発想で更に新し時代を築くアートに生まれ変わらせる。そのデジタルアートを更にNFT化し未来へと繋いでいく。まさに聖火のごとく受け繋がれていくアートの連鎖が生まれます。

京友禅デザイン画「草稿」x 和久井 拓デザインのタイツ


和久井氏はファッションブランドNERGYとのコラボレーションで美脚タイツを制作された実績もあります。

HIRAKU WAKUI x NERGY

例えばタイツに今回の京友禅を活かしたアートを取り入れたイメージが上の写真になります。

和久井氏のように、ファッションなどリアル商品も手がけたことがある方であれば、イラストに止まることなく、プロダクトとして世に出すなど、デジタルデータだからこそ可能性は広がります。

是非皆さんも、これからお披露目される京友禅デザイン画「草稿」をNFTでゲットして、自由な発想で創作してみてください。


プロフィール

和久井 拓[ワクイヒラク]

芸術家/ 肉体彫刻家

1979年山形県の陶芸家の家に生まれる。

学生時代はファッションデザイナーを志ざし、桑澤デザイン研究所にてオートクチュールデザイナーである故植田いつこ氏に師事。

卒業後に大手商社、アパレル企業、出版社、フリーランスデザイナー/コンサルタント、広告代理店などを経て30歳で独立し、経営コンサル企業の運営を開始。

現在、PRO FIT.株式会社代表取締役にして、独自の肉体彫刻メソッド「UBM」により、理想の体を作り上げる指導を行う。

その傍ら、アパレル企業と自身のアート作品を使ったコラボレーションウェアの制作、販売なども手がけている。

肉体彫刻セッションは完全紹介制で、日本一高額ながら「必ずなりたい体になれる」と遠方より通う生徒さんも多数。

WORKS

H.WAKUI

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